2007年12月2日日曜日

書物の力

この前の記事で、ネットの便利さに感嘆したばかりですが。

しかし、やっぱり、底力を発揮するのは、書籍なのである!!!
(ただし、良書、ね。手間暇かけず、出版される書籍もあるので。)
ここは、立場上(なんの立場か、よくわからんが)、強調しておかないと。
『生活時間』(1984)の序章「現代における家庭経営学的生活時間研究の意義」及び第1章「生活時間調査・研究の系譜と動向-生活時間分類を中心に-」と、『生活時間と生活福祉』(2005)の「編者あとがき」を合わせて読むと、私のような突貫工事の門外漢ですら、その研究蓄積に胸打たれるものがあるのだから、当該研究者グループ・サークルの方々にとっては、『生活時間と生活福祉』(までの)発行は感慨深いであろうし、「編者あとがき」は、おそらく、思わず、感極まって涙してしまうような文章だろうな、と敬意を払います。
といいつつ、本題の調査報告自体は、目的と問題関心が異なっていることもあって、精読するには(今のことろ)至りそうにないのですが。

とはいえ、かなり、知的刺激を受ける本です。
ここでは、調査設計-伊藤・大竹いうところの「典型調査法」について、若干。
と、つい、さっきまで読んでいたのに、え~っと、どこに書いてあったっけ?と、索引に助けられました。








そもそも、「生活時間調査」などという、べらぼうに手間暇かかる調査を5年おきに30年継続しているというだけでも、驚異の産物。私なんか、データ処理の段階から引き受けた(引き受けざるを得なかった)だけで、しかも、21世紀の文明の利器(統計ソフトや表計算ソフト)をもってしても、ねをあげているというのに。
興味深かったのは、いろいろありますが、ここでは、調査方法・手法について。
(生活時間分類に関する検討も、当時の研究状況への批判を、行間からの熱気も見えつつ、興味深いのですが、略。)
すなわち、著者らは、無作為サンプルを批判して、「典型調査法」を提唱し、その論拠を示したうえで、著者らの「生活時間調査」をその方法で実施している。
(合わせて、事例調査も行っており、こういった点は、トライアンギュレーションの優れた先行例と思います。トライアンギュレーションについては、下記、文献を参照。あ゛、『フィールドワーク』、新版、まだ手にしてないかも・・・)






著者らのいう、「典型」とは、「単なる平均的代表を意味するのではなく、あくまでも理論的に規定された対象の特徴を最も鮮明にあらわす対象のこと」(p.67)で、要するに、ウェーバー言うところの「理念型」のことだと思われます(福祉関係者の中には、M大家の論文を誤読して、「理念型」を「理想型」などと言って、誤解している向きが、しばしば、ありますが)。
乱暴に要約すると、”無批判な”ランダムサンプリングによる調査では、自分たちの知りたいことがわからない、と。自らの調査目的に沿った、そして、理論的作業を前提とした上で、調査対象を選ぶのだ、ということです。

この調査姿勢は、非常に、共感するのです。
福祉業界では、いわゆる質的調査を行う人たちの、量的調査への負い目というか何というか(反転して開き直りというか)が見受けられたり、一方、(私が理解不足なだけかもしれないが)無味乾燥な量的調査を量産するグループもあったり、で。
少数だろうが、大量調査だろうが、無意味な数の勝負は、あまり生産的とは思えない。
要は、調査目的と手法があっているかどうか、そして、調査設計が適切かどうか、そこが問題なのであって、単純なサンプル数の問題ではない(と、これだけ書くと、実に、あたり前・常識的な話なんですけどね)。
さらに最悪なのが、何がやりたいのか、意味不明の、行政調査ね(^^ゞ


手法の話だけしていても、しょうがないのですが、
しかし、”技”としての手法も、決して無視できないわけで。
データが豊富にありそうで、実のところ、何かをいうためには、まだまだ手法を洗練させる必要があると思われる、社会福祉の領域では、次のような、面白い企画の書籍が出ております。
特に、現場を経て、何かを言いたくなり、あるいは、実践を整理したくて、という方には参考になるのでは、と思います。

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